第1回 明日の幸せのスマイル対談
こんにちは!桶庄稲浦です。
この度弊社社長の佐藤寛之が、作家・小説家の志賀内泰弘先生と対談させていただきました!
志賀内先生の書籍、「ギブアンドギブの法則」は、毎年の内定者研修で使用させていただいており、このような書籍を参考に新入社員は人生の指針になる”決意表明”を書き上げていきます。
この考え方に深く共感し、入社してくれた社員が大半なのではないでしょうか!
そんな先生との対談内容を、特別にブログにてご紹介します!
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■褒めたり持ち上げたりすることがおもてなしではない
佐藤 志賀内さま、本日はよろしくお願いします。『京都祇園もも吉庵のあまから帖』、最新刊(6)も拝読しました。もも吉さんのモデルはいらっしゃるんですか?
志賀内 祇園甲部に「吉(上が土の吉)うた」というお茶屋さんがあって、そこのおかあさん(女将)がモデルです。祇園を舞台にした小説を書くことになって、取材のために通っていたわけです。たとえ相手がお客様でも、筋が通らないことに黙って頷いたりはされません。たとえば祇園に外国人観光客がたくさん来て、トラブルが頻発していたときに、私が「それなら、江戸時代みたいに門を作ってお金を使ってくれる人しか入れないようにしたら?」と口にしたら、「そういうことやあらしまへん」とビシッと諭されたのです。対等のつきあいをしながら、大人として会話ができる。おもてなしというのは、決して褒めたり持ち上げたりすることじゃない。それを体現しているこの人をモデルにしたいなと思ったんです。背筋がピンと伸びていて、心がしゃんとしている。
佐藤 作品の中にもよくその表現が出てきますよね。ちなみに、美都子さんのモデルは?
志賀内 美都子さんは架空の人物ですが、これからメインで登場するようになってきます。
佐藤 それは楽しみです。
■「右隣の人に親切にされたら左隣の人に親切にしなさい」
志賀内 佐藤さんはよく私の作品を社員教育に使ってくださっているそうですね。
佐藤 『「いいこと」を引き寄せるギブ&ギブの法則』を新入社員研修で使わせていただいています。「ぐるりの教え」の部分です。
志賀内 「ぐるりの教え」は愛知県の知多半島の日間賀島の実話が元になっています。日間賀観光ホテルの中山勝比古さんに、中国の客家(はっか)の法則のことを話したら、「うちの島でも同じことを実践して発展して来ました」とおっしゃって。
佐藤 中国の客家とは何ですか?
志賀内 客家は福建省の少数民族ですがとても優秀で、政治家の鄧小平、孫文、そして台湾の李登輝もそうだと言われています。テレビ番組で「どうして客家は優秀な人たちを輩出しているんですか?」と質問されたら、長老は「右隣の人に親切にされたら右隣の人に親切を返してはいけない。左隣の人に親切にしなさい。それはやがてぐるっと回って自分に帰ってくるという教えがあるからだ」と言うのです。彼らの家は土でできた集合住宅で、ぐるっとドーナツみたいな形なんです。
佐藤 そうなんですか。
志賀内 「あの人は親切にしてくれるから、あの人には親切にしなければいけない」というのはギブ&テイク。でも、お互いに親切にしているだけでは発展性がない。実は経済も同じ。千円のモノをもらったから千円のモノを返したら、足せば二千円ですが、それがぐるっと10軒続いたら一万円になるわけです。
佐藤 どこかで止まってしまわない?
志賀内 客家はひとつの建物の中に200戸ぐらい部屋があって、計700人ぐらいが住んでいる。これが千何百棟もあり、どこでも同じことをやるらしいんです。お金、モノ、心をもらったらその人に返さずに他の人にまわしていく。中で豚や鶏を飼っていて、いざとなれば籠城できるように食料が保管してある。運命共同体ができているわけです。
佐藤 なるほどね。
志賀内 今なら会社と言っていいかもしれない。これで何が起こるか。自分は常に他人のことだけを考え、他人のために何ができるかで生きていくことができる。自分のことだけ考えていたり、目の前の仕事だけ考えている人と付き合っていたりすると、発展性がないし、努力してもつながっていかない。だから次はどうやってリレーできる仲間を作っていくか。これこそ会社の醍醐味だと思うのです。
佐藤 ああ。すごくわかります。
志賀内 ギブ&テイクは良いように言われていますが、実は不幸を呼ぶ入り口だということに気づいてもらいたい。「お返しをしないといけない」というのは逆の立場になると「あげたのに」。これが仕事になると「何かしてあげたから何かしてくれ」ですよ。「何々してあげたのに、何々してくれない」という泥沼にはまっていくと、ちっとも幸せにならない。今の「ギブ&テイク」からいかに脱して「ギブ&ギブ」にするかです。
■「どうしたら相手に喜んでもらえるか」を大切にして働く
志賀内 佐藤社長は、おもてなしについてどう社員に話していらっしゃるんですか?
佐藤 表現方法としてのマナーは大切ですが、そこに心がこもっていなければ、逆に冷たいものになってしまう。多少不器用であっても、まずその気持ちが大切だと思います。少し耳が遠い方であれば、大きな声でゆっくり話すとか、急いでいる方には、レスポンスよく対応するとか、一人ひとりに寄り添うことです。考え方なしにマニュアルだけあると、マニュアル通りにすることが目的になって、相手を置いてきぼりにしてしまう可能性があるので。
志賀内 おっしゃる通りですね。
佐藤 人間って考えながら仕事をすることがいちばん楽しいんじゃないかなと思っていて、「マニュアル通りにやれば問題ないよ」みたいな会社というのは、何か違う。その人が自分で考えて「どうしたら喜んでもらえるか」とか、そういうことを大切に働ける環境にしたいなと考えています。
志賀内 そういう理念を伝えた後、どうやって行動に移すように促していくんですか?
佐藤 毎年1回、お客様へ日頃の感謝をお伝えする場として「愛と感動」のバス旅行を開催しているのですが、社内でこの旅行の企画プロジェクトを起ち上げて、そこで実際に経験してもらっています。旅行先はどこにするか、お土産は何をお持ち帰りいただくかとか。
志賀内 経験ってどういうことですか?
佐藤 このバス旅行は基本的にはご夫婦、もしくは親子でご参加いただくのがルールなんですね。旅行する中で家族の絆が自然に深まっていくような、そういう機会を私たちがプロデュースする。撮影スポットを準備して、スタッフがたくさん写真を撮ってアルバムにしてプレゼントするとか、遠く離れて暮らすお子様から事前に手紙をお預かりして、それをサプライズでお渡しするとか。
志賀内 最初からそんなアイデアが出てきました?
佐藤 最初は「どうしてこんなことをやるんだ」とか「忙しいのに」とかみんなイヤイヤでしたね。でも、お客様がすごく喜んで「また参加したい」とおっしゃったり、後日、感謝のお手紙をいただいたりとか。それで、「私のお客様を呼びたい」と。2回目くらいから変わったんです。やっぱりお客様に感謝されることが嬉しかったんじゃないでしょうか。
志賀内 企画力もつきますね。旅行中、トラブルとか起きません? 夫婦喧嘩して「帰る!」みたいな(笑)。
佐藤 それがないんです。いいお客様ばかりで。だから、私たちも楽しいんです。
志賀内 桶庄さんはお客様を含めてこういう「善循環」の環を広げているんですね。
佐藤 「善循環」はぐるりの教えなんですよ。私たちの旅行に参加していただいて、そのあと帰る家が私たちがプロデュースした家。その空間で、お土産のお弁当を食べながら、1日を振り返っていただく時間がゴールです。「すべては、私たちの明日の笑顔のために!」というのは、今日だけの笑顔で終わらないで、末広がりの明るい未来へつながっていって欲しいと願って掲げています。なんだかんだ言いながら毎年、みんな協力してくれますし、社員もそれがわかってきていると信じたいですね。
志賀内 いいこと言いますね。次回のバスツアー、ぜひ取材させてください。
佐藤 バスの中で講演していただこうかな(笑)。本日はありがとうございました。